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Everyday is the best day of the year ;) と思うことにしよう。うん。

査読中に考えていること

私が初めて査読(学術誌に投稿された論文を審査するために読むこと)というものに関わったのは、大学4年生のときでした。大学院に進学するために、ある先生について(弟子入りして)勉強していたのですが、その先生に「やってみないか?」と声をかけられたのがきっかけでした。その当時は査読がなんなのかも分からず、また内容について真向から批判したりコメントすることもろくにできる知識もないので、渡された論文にただただ目を通し、論文の体裁ばかりチェックしていたのを覚えています(投稿者の皆様、ごめんなさい)。

現在は年間約20-40本(年によって幅があります)の査読をしています。日本語のものが5%、英語が95%です。世界中の人が投稿してきた論文を読むことは、新しい内容やその分野の動向を知ることができるだけでなく、多様な英語にも触れられるという意味でも、自分にとって勉強になり非常に嬉しいことです。しかし、ただただ嬉しいばかりではありません。時間はないし無償だし・・・

というわけで、今後も真剣に手を抜くことなく査読に向き合えるように、この辺で一度、「自分の」査読の仕方について省みておこうと思います。ただし、ここに書くことはあくまでも「私の」査読についてなので、他の査読者と異なる点も多いでしょう。その点はあしからず!それから、自分自身が投稿論文数が少ないという話もひとまず置いておいておきます(苦苦苦)。

【査読中に見ている点】

  • 体裁:APAスタイルだったり、MLAスタイルだったり、その学術誌の指定するスタイルになっているかどうかは、採択・不採択の「ものすごく」大きな要因にはなりませんが、指定されていることをきちんとやっている人の論文は内容も優れている、というのは往々にしてあることです。引用の仕方が雑なもの(たとえば、書いている途中に年号やページ数が分からなくて保留にしてある様子がうかがえるもの、文中で引用しているのに引用文献に載せていない、など)、スペルミスが多いもの、段落が乱れているもの、などは少し印象が悪くなります。そうすると何が起きるか。自然と論文の内容に関する視点までもが厳しくなってしまいます。「これだけ体裁がめちゃくちゃなら、内容にも不備があるのではないか」と思ってしまうわけです。
  • 章立て(節含む)章立てがうまくいっている論文は、たいてい展開がスッキリしていて論理的です。この場合の「うまくいっている」とは、タイトルの付け方(その章の内容を的確に表現できているか)や、量(要らないのに章立てしている、逆に必要なのに章立てしていない)や、構成(起承転結、導入・本論・結論)に不備がないということです。私の場合、最初にいきなり論文の最初から最後まで読むのではなく、どのような展開のものなのかを章立てをチェックしてから読み進めています。
  • 学術誌の理念に沿っているか:学術誌には必ず「~は・・・であるべきだ」という一つの大きな考え方があります。それに対して論理的に反論しているものは問題ないと思いますが、非論理的に&感情的に反論しているものは、不採択になる傾向にあります。また、まったく学術誌の理念に触れない(というか内容がまったく関係ない)ものも採択されにくいかと思います。これに関連して、「地雷用語」を多用している場合に採択が難しくなることもあります。たとえば、「ノンネイティブ・スピーカーによる多様な英語も英語として認めようじゃないか」という内容にもかかわらず、ノンネイティブの英語に対して"errors"という言葉を多用しているものは「ん?本当はノンネイティブ英語は「誤り」の塊だと思っているんじゃないの?」と思ってしまいます。
  • タイトル:最後にタイトルをチェックしています。読んだ内容とタイトルが一致していないことは多々あります。~の質的研究、というタイトルなのに、実際には量的研究も盛り込んでいたとか、~の質的研究と量的研究とあるのに、片方だけだった、ということもあります。これはあくまでも予想なのですが、本文を書く前にタイトルをつけた、また、最初につけたタイトルを本文を書き終えた後に見直さなかった、というケースが多いのではないかと思います。

おおまかに書くと、こんな感じでしょうか(この他にもちろん、個々の論文の内容に応じて統計面のチェックをしたり、論理性を見たりしています)。

で、最後に・・・私のような若輩者が言える立場にはないことを重々知りつつ、それでも執筆者にお願いしたいことは・・・こちらは時間をかけて丁寧に査読していますので、「適当な論文は送らないで」ということです。時間に追われて執筆者本人すら読み直していない書きっぱなしの論文が送られてくると、本当に泣けてきます。半年、一年でも投稿を遅らせて、きちんと読み直した論文を送ってください┏○))ペコ