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Everyday is the best day of the year ;) と思うことにしよう。うん。

「eラーニング」の授業でもノートを使わせることにこだわる理由

2006年に「英語eラーニング」という授業を初めて担当しました。この授業では、ALC NetAcademyという「eラーニング」教材を使って、対面授業を行うことが教員に求められました。

eラーニングとは、情報技術によるコミュニケーション・ネットワーク等を活用した主体的な学習である。これは、集合教育を全部または一部を代替する場合、集合教育と組み合わせて利用する場合がある。コンテンツは学習目的に従って作成・編集され、コンテンツ提供者と学習者、さらに学習者同士の間で、必要に応じてインタラクティブ性が確保されている。このインタラクティブ性とは、学習を効果的に進めていくために、人またはコンピュータから適切なインストラクションが提供されたり、双方向コミュニケーションが実施されたりすることを指す。 「eラーニング白書 2007/2008年版」(経済産業省商務情報政策局情報処理進行課編/東京電機大学発行)より
 
今でこそ「集合教育と組み合わせて利用する場合がある」のくだりは珍しいことでもなく、ブレンディッド•ラーニングは日本ではかなり一般的になりつつありますが、当時「eラーニング」といえば、単なる自学自習を指しました。なので、なぜ自学自習用の教材をわざわざ対面授業に持ち込むのかが分からず(「自分で勉強すればいいじゃない、と思っていました)、また、それを使ってどう授業をすれば良いのかも非常に悩みました。
 
最初の頃は、NetAcademyの画面に沿って解説を行い、学生に問題を解かせるだけの授業しかできませんでした。工夫と言えば、小テストをするくらい。あとは、PCルームでの授業だったので、補助プリントを用意し、ネットでNetAcademyの内容に関連したことを調べ学習させるくらいでした。
 
初回の授業から2か月くらい経ったとき、学生から「クリックするだけでは、勉強している気がしない」「書きたい」という声があがりました。調べてみると、上級クラスでも下級クラスでもどこのクラスの学生も同じ感想を持っていました。学生たちのおかげで、eラーニング教材を使っているからといって、パソコンですべてを済ますのはダメなことに気づかされたのです(今となっては当たり前のことなのですが(苦笑))。
 
そこで単純ですが、学生にノートを購入してもらい、NetAcademy上の短いリーディング素材や、センテンスレベルの文法(穴埋め)問題などを書写させることを、授業や宿題に取り入れてみました。すると次の利点が見られました。
 
  1. 授業開始時に書写を導入すると、休み時間から授業にスムーズに入れる(学生があっという間に授業モードになる)
  2. 学生の満足度が上がる(特に下級クラスにおいて)
  3. 宿題で、NetAcademyの問題を解いた後に正しい文の書写を義務づけると、確認テストの点数が上がる
  4. (上級クラスにおいて)書写した文・文章に関して文法的な質問が出る
 
このなかで私自身が特に重要だなと感じていたのは、実は2番でした。授業内での「満足」(学習者の情意的側面)は、英語が大嫌いな学生に英語を教えるうえでの最大のテーマだと思っていたからです。英語に強い拒否感を抱いている目の前の学生たちには、これ以上、英語を拒否してもらいたくない、という気持ちで授業を進めていたので、「満足」というプラスの感情が芽生えることは、ある意味(部分的に)、成功だったのです。
 
(もちろん、満足する=即、学習効果が上がる、手で書く=即、学習効果が上がる、ということには決してならないので、その点はノートの役割について研究する必要もあるのでしょうが・・・)
 
というわけで、「eラーニング」(デジタル)の授業であってもノート(アナログ)を用意させ、より多くの単語・文・文章を書かせてきました。このデジタル&アナログの共存について何度かFDで報告させていただいたのですが、周囲の先生方の意見はさまざまでした。eラーニングなのだからデジタルのみで、という先生もいらっしゃいましたが、一番多かった意見は「自分の担当する英語eラーニングの授業でもノートを使うことを取り入れてみたら、学生の学習態度が明らかに変わった」というものでした。考えてみれば、たいしたことのない話なんですが、eラーニングという科目名が付いているからといって、デジタルだけで完結させる必要はないのですよね。
 
そんなeラーニングの授業を担当するのも今年度でおしまい。ただ、来年度にどんな科目を担当することになっても、英語の授業におけるノートの役割はバカにせず考えていきたいと思っています。
 
(参考)